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彼方までそのまた彼方まで花菜

小山正見

与謝蕪村の「菜の花や月は東に日は西に」の句はあまりに有名である。
この句の菜の花は、もちろん一本ではない。蕪村の句の背景には各地に広大な菜の花畑が広がっていたという事実があった。
アブラナと呼ばれるように菜の花は調理油だけでなく、行灯や燈明などの燃料として、夜を照らす油だった。菜の花は江戸時代のかけがえのないエネルギーだったのである。
当時は、それこそ果ても見えないほど菜の花が栽培されていたと想像できる。
今、それに最も近いのは千葉のマザー牧場だろう。300万本の菜の花が山を覆う。
昭和記念公園など都内にも菜の花の名所がある。その一つが都心にある浜離宮だ。
門を潜ると、すぐにお花畑に植えられた菜の花の黄色が目に入る。一斉に咲きそろった姿は見事というしかない。
花の間を無数の蜂が飛び交っている。顔を忙しく花びらの一つ一つに埋め、花から花へと移っていく。蜂の羽音が聞こえてくるかのようだ。周りに咲くホトケノザの紫が菜の花の黄色をさらに輝かせている。
腰を下ろし、菜の花畑を見つめていると「春が来た」という実感がじわじわと湧いてきた。

都政新報3/10付 「暮らしを楽しむ俳句フォト23」