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日傘差す男の見栄は横に置く

小山正見

暑い日が続く。毎日35℃とは、異常に違いない。
かつては「夕立」というのがあった。一雨ざあーと降って、やむと涼しくなり、虹が掛かったりした。
30℃位だと「夕立」ぐらいのエネルギーなのだが、35℃になるとエネルギーが桁違いで、集中豪雨並みになるという天気予報士の解説を聞いて腑に落ちた。
日傘もかつては装飾品の域だった。日焼けを防ぐためのご婦人の身だしなみに過ぎなかった。レースをあしらった「白日傘」など優雅なものだ。印象として言えば、クロード•モネの「日傘をさす女」である。
「日傘は女がさすモノ」という観念がぼくの頭の中に染み付いていた。ぼくには一点豪華主義の帽子があると強がりを言っていたが、ついに屈した。背に腹は変えられない。
日傘をさすのと直射日光に当たるのでは、雲泥の差だとさしてみて初めて気がついた。
妻がグループホームにお世話になり始めてから、もうすぐ4年になる。
歩いて片道25分程度、往復だと50分だ。歩く以外の交通手段がないのが玉に瑕だ。普段は丁度良い距離の散歩になるのだが、夏は勇気がいる。途中のスーパーマーケットの冷房の中で一息ついて、また歩く。
日傘にして、少し楽になった。
妻の病状は芳しいとは言えない。それでも、生きていてくれるということは何とありがたく、嬉しいことかと思う。