俳句フォトエッセイ2026.03.19春の夜の天麩羅定食せいろ付き小山正見元住吉にはラーメン屋が少なくても10軒以上ある。栄枯盛衰も激しい。知らぬ間に新しい店ができ、知らないうちに閉店している。ラーメン激戦区になったのだ。それと比べて日本蕎麦屋は2軒しかない。両方とも昔からある店だ。ブレーメン通りの富士見庵と駅の反対側のオズ通りにあるやぶ久である。ぼくが好きなのはやぶ久だ。暖簾が格好いいし、竹を配した店内の雰囲気がいいからだ。妻と共に暮らしていた時は、よく2人で来た。妻はとろろ蕎麦を頼むことが多かった。ぼくはいつも野菜天丼だった。今夜は久しぶりのやぶ久。お品書きを眺め、野菜の天麩羅定食に決めた。しばらくしてお膳が運ばれてきた。大根の煮物やきんぴらごぼうなどの小鉢もついている。サラダもある。相当な量だ。「あと、お蕎麦が来ます。暖かいのとせいろとどちらがいいですか?」「えっ、まだ来るの!」そんなに食べられないし、お蕎麦は要らない。「じゃあ、せいろを」と仕方なく答えた。ところが、箸をつけてみると、そのせいろがうまい。舌触りがいいのだ。蕎麦の冷たさが何とも言えない。結局完食してしまった。最後に箸置きに使われていた落花生の皮を剥いて、口の中に放り込んだ。蕎麦もなかなか捨てたものではない。妻は昔からこの味を知っていたのだろう。
元住吉にはラーメン屋が少なくても10軒以上ある。栄枯盛衰も激しい。知らぬ間に新しい店ができ、知らないうちに閉店している。ラーメン激戦区になったのだ。
それと比べて日本蕎麦屋は2軒しかない。両方とも昔からある店だ。ブレーメン通りの富士見庵と駅の反対側のオズ通りにあるやぶ久である。ぼくが好きなのはやぶ久だ。暖簾が格好いいし、竹を配した店内の雰囲気がいいからだ。
妻と共に暮らしていた時は、よく2人で来た。
妻はとろろ蕎麦を頼むことが多かった。ぼくはいつも野菜天丼だった。
今夜は久しぶりのやぶ久。
お品書きを眺め、野菜の天麩羅定食に決めた。
しばらくしてお膳が運ばれてきた。
大根の煮物やきんぴらごぼうなどの小鉢もついている。サラダもある。相当な量だ。
「あと、お蕎麦が来ます。暖かいのとせいろとどちらがいいですか?」
「えっ、まだ来るの!」
そんなに食べられないし、お蕎麦は要らない。
「じゃあ、せいろを」
と仕方なく答えた。
ところが、箸をつけてみると、そのせいろがうまい。舌触りがいいのだ。蕎麦の冷たさが何とも言えない。結局完食してしまった。
最後に箸置きに使われていた落花生の皮を剥いて、口の中に放り込んだ。
蕎麦もなかなか捨てたものではない。
妻は昔からこの味を知っていたのだろう。