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春日向ぼくの愛した喫茶店

小山正見

天気がいい。それに暖かい。
散歩に出かけることにした。
「どこに行こうか」
思い出したのは、麻布食堂だ。ここで昼飯を食えば、松本先生の個展にも再度伺うことができる。
麻布牛坂の急傾斜を登る。
麻布食堂は、オムライスが有名だが、ぼくはハンバーグにした。当たりだった。うまいし、安い。麻布にもこんな店があるんだ。
すぐ前が松本先生の個展だ。何度見ても胸に迫ってくる。不便な場所なのに、次から次からお客さんが来る。やはり話題の写真展なのだ。
思いもかけず会場で一緒に仕事をしてきたT先生にお会いした。
「一日誰とも喋らない日になるかも」
と思っていたのに、おしゃべりに花が咲いてしまった。
霞町の交差点に出る。小泉首相がブッシュ大統領と会食した権八はまだ健在だった。
そして、六本木に向かう途中の路地を入ったところにカファ•ブンナはある。僕の愛した喫茶店の一つだ。まだやっていそうなので安心した。
店から出て来た老夫妻に
「ここのコーヒー美味しいわよ」
と声をかけられた。(ぼくの言いたいセリフだ)
この店に最初に脚を踏み入れたのは40年近く前のことだ。木のカウンター、緑の椅子、白い壁。当時と少しも変わらない。
マスターも以前のままだ。
昔から爺さんのようだったが、40年前はぼくと同様若かったのであろう。
昔と同じ、ぼくの定位置だったカウンターの隅っこに座る。目の前にある大きな電気スタンドの光が優しい。
ぼくはあと何回この店に来ることができるだろうか。