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晴れわたる五月の地下のラビリンス

小山正見

ラビリンスとは迷宮のことである。世の中には不思議なことが色々ある。
先日の朝元住吉の駅で妙齢のご婦人から「おはようございます」と声を掛けられた。一体誰なのかどうしても思い出せない。今日の朝も同じことがあった。これは世の中が不思議なのではなく、ぼくの頭の中が迷宮になってしまっているのかもしれない。
練馬区の学校から呼ばれて、研修会に赴いた。「乗換案内」を使って、乗換駅を慎重に確認したにも関わらず、間違えて違う路線に乗ってしまった。
最近の電車、特に地下鉄の路線は実にわかりにくい。正に迷宮。
駅もそうだ。渋谷駅はその典型。自分がどこにいるのか、通路がどこに出るのか、さっぱりわからない。駅の中だけでなく、外も変わってしまったのでダブル迷宮だ。
実はやり残した授業のために、もう一度練馬区の学校に行くことになった。今度こそ間違えずに行こうとアプリと睨めっこして行ったのに、結局また間違えてしまった。
なんでこんなことになるのだろうと考えた。
アプリでは乗る電車しか出てこない。盲目的に指示に正確に従わないと失敗する。つまり、路線の全体像がわからないからではないか。つまり、おおよその見当をつけることができないということに気がついた。
全体を俯瞰できるのは、他の動物と違う人間の大きな能力だ。
大阪万博の会場が分かりにくいという話があるが、これもアプリに頼っているせいだろう。
考えてみるとYouTubeも同じだ。一つの動画を見ると似たようなものばかり次々に出てくる。
新聞を読めばさまざまな記事があり、日本の色々な問題の「地図」を見ることができるがYouTubeにはその地図がない。
自分の現在地がわからなくなり、迷宮の中に閉じ込められることになる。
自分の中の迷宮とネットの中の迷宮。
この二つの迷宮の中でこれから右往左往することになるのであろうか。