俳句フォトエッセイ2025.12.31極月の紙吹雪舞ふ芝居小屋小山正見「大島劇場はここが便利です」と臨港バスのアナウンスで聞いた。「こんな所に劇場があるのか」川崎区大島。交通の便が良いとは言えない場所だ。しかし、大島劇場は1950年の創業。75年間営業を続けてきた。知る人ぞ知る大衆演劇を象徴する芝居小屋である。大衆演劇は根強い人気をもつ。全国に50以上の芝居小屋があり、それを上回る数の劇団が活動している。如何にも昭和レトロの芝居小屋。畳敷の観客席には座布団と座椅子が用意されている。毎月、公演する劇団は変わるが、今月は「笑門(えもん)」という結成3年目の若い劇団だった。座長は、天昇屋心竜。実に格好良い名前だ。年末の24日まで休みなく公演を行う。土、日にはマチネの公演もある。驚いたのは毎回演目が異なることだ。毎日通っても楽しめる仕掛けになっている。第一部はお芝居。この日の演目は「天保水滸伝」だった。すぐ目の前で繰り広げられる丁々発止の芝居に思わず引き込まれる。役者の見えがこれほど格好良いとは思わなかった。ファンができるのは当然だ。「推し」の原点はここにあるのかもしれない。第二部は舞踊ショーである。演歌や歌謡曲に合わせて一人一人の役者が踊る。女形舞踊である。この女形がとてつもなく美しい。映画「国宝」で吉沢亮の演技が話題になったが、どの役者も引けを取らない。手の届きそうなところで、美しさと色気がはじける。黄色い声が飛び、贔屓の役者には花やレイの「おひねり」を帯に挟む。ぼくの手を取ってくれた女形は男だとわかってもドキドキしてしまった。観客が多くても少なくても手を抜かない。こんな美しく真に迫った演技が3時間も目の前で見られて、二千円だ。帰りは寒さが気にならなかった。何だか癖になりそうである。
「大島劇場はここが便利です」と臨港バスのアナウンスで聞いた。
「こんな所に劇場があるのか」
川崎区大島。交通の便が良いとは言えない場所だ。
しかし、大島劇場は1950年の創業。75年間営業を続けてきた。知る人ぞ知る大衆演劇を象徴する芝居小屋である。
大衆演劇は根強い人気をもつ。全国に50以上の芝居小屋があり、それを上回る数の劇団が活動している。
如何にも昭和レトロの芝居小屋。畳敷の観客席には座布団と座椅子が用意されている。
毎月、公演する劇団は変わるが、今月は「笑門(えもん)」という結成3年目の若い劇団だった。座長は、天昇屋心竜。実に格好良い名前だ。年末の24日まで休みなく公演を行う。土、日にはマチネの公演もある。驚いたのは毎回演目が異なることだ。毎日通っても楽しめる仕掛けになっている。
第一部はお芝居。この日の演目は「天保水滸伝」だった。すぐ目の前で繰り広げられる丁々発止の芝居に思わず引き込まれる。役者の見えがこれほど格好良いとは思わなかった。
ファンができるのは当然だ。「推し」の原点はここにあるのかもしれない。
第二部は舞踊ショーである。演歌や歌謡曲に合わせて一人一人の役者が踊る。女形舞踊である。
この女形がとてつもなく美しい。映画「国宝」で吉沢亮の演技が話題になったが、どの役者も引けを取らない。
手の届きそうなところで、美しさと色気がはじける。黄色い声が飛び、贔屓の役者には花やレイの「おひねり」を帯に挟む。
ぼくの手を取ってくれた女形は男だとわかってもドキドキしてしまった。
観客が多くても少なくても手を抜かない。こんな美しく真に迫った演技が3時間も目の前で見られて、二千円だ。帰りは寒さが気にならなかった。
何だか癖になりそうである。