俳句フォトエッセイ2026.01.28芭蕉から始まる新春講座かな小山正見講師は渡邊尚代先生である。彼女は欧米文学の専門家で、神保町にある児童書専門店のブックハウスカフェを会場に、長年講座を続けてこられた。昨年あたりから、尚代先生は芭蕉の『おくのほそ道』に相当に興味を持たれたようだ。その尚代先生は、行動の人である。早速、日光の裏見の滝に出かけ、平泉にも立石寺にも足を伸ばされた。足で現地を見なければ真髄はわからない、というのが尚代先生の考え方である。そして、数十ページにわたる詳細なテキストが用意されての講座であった。芭蕉が活躍した時代は、シェークスピアやセルバンテスと近いという。欧米文学を知り尽くした尚代先生ならではの視点である。ぼくは、しばらく『おくのほそ道』から遠ざかっていたが、尚代先生の作られた膨大な資料を前にして、たとえば「かさねとは八重撫子の名なるべし」「塚も動け我が泣く声は秋の風」といった芭蕉の句に、久しぶりに浸ることができた。すると突然、尚代先生から「折角来たのだから、句会をやってほしい」と頼まれた。そう言われたら、やるしかない。少し考えて、お正月をテーマに、参加者の皆さんに即席で俳句を作ってもらうことにした。例題として、「我が家では ◯◯◯◯ お正月」を挙げ、中七を考えればすぐできますよ、と示した。たとえば、「我が家でてんやわんやのお正月」よりも、「孫の来ててんやわんやの正月」とすると、さらによくなりますね、と話した。初詣もテーマに加えると、五分ほどで、みんなの句が揃った。どんな俳句ができあがったか、挙げてみる。お正月三代揃う墓の前我が家では一人お節のお正月山の神私も走るお正月お雑煮にイクラを入れるお正月黒豆の甘さが続くお正月風の音もきのうと違うお正月犬抱え自転車漕いで初詣どの句も自然で、生活感に溢れている。尚代先生の講座は、正に「今年初心に沁みる尚代節」であった。
講師は渡邊尚代先生である。
彼女は欧米文学の専門家で、神保町にある児童書専門店のブックハウスカフェを会場に、長年講座を続けてこられた。
昨年あたりから、尚代先生は芭蕉の『おくのほそ道』に相当に興味を持たれたようだ。
その尚代先生は、行動の人である。早速、日光の裏見の滝に出かけ、平泉にも立石寺にも足を伸ばされた。足で現地を見なければ真髄はわからない、というのが尚代先生の考え方である。
そして、数十ページにわたる詳細なテキストが用意されての講座であった。
芭蕉が活躍した時代は、シェークスピアやセルバンテスと近いという。欧米文学を知り尽くした尚代先生ならではの視点である。
ぼくは、しばらく『おくのほそ道』から遠ざかっていたが、尚代先生の作られた膨大な資料を前にして、
たとえば
「かさねとは八重撫子の名なるべし」
「塚も動け我が泣く声は秋の風」
といった芭蕉の句に、久しぶりに浸ることができた。
すると突然、尚代先生から「折角来たのだから、句会をやってほしい」と頼まれた。
そう言われたら、やるしかない。少し考えて、お正月をテーマに、参加者の皆さんに即席で俳句を作ってもらうことにした。
例題として、
「我が家では ◯◯◯◯ お正月」
を挙げ、中七を考えればすぐできますよ、と示した。
たとえば、
「我が家でてんやわんやのお正月」
よりも、
「孫の来ててんやわんやの正月」
とすると、さらによくなりますね、と話した。
初詣もテーマに加えると、五分ほどで、みんなの句が揃った。
どんな俳句ができあがったか、挙げてみる。
お正月三代揃う墓の前
我が家では一人お節のお正月
山の神私も走るお正月
お雑煮にイクラを入れるお正月
黒豆の甘さが続くお正月
風の音もきのうと違うお正月
犬抱え自転車漕いで初詣
どの句も自然で、生活感に溢れている。
尚代先生の講座は、正に「今年初心に沁みる尚代節」であった。