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花の夢『俺の細道』てふ句集

小山正見

季語「花の夢」は集中よりとったが、この句集はぼくにとっては夢物語だという意味である。
句集『俺の細道』の著者、藤英樹さんは元東京新聞の記者で、歌舞伎など古典芸能の専門家だ。現在は長谷川櫂氏が主宰する「季語と歳時記の会」の機関誌「きごさい」の編集長もされている。
句集の名前から想像できるようにこの句集は芭蕉の奥の細道に因んだ句集だ。
ところが、尋常ではない。
芭蕉の歩んだ全行程を全て徒歩でそのまま辿ったというのだ。
所々歩く人はよくいるが、全行程踏破した俳人は林誠司さんの他知らない。
最初の句は
草餅をたうべて矢立初めかな
気負いがないが、さぁやるぞという気分が伝わってくる。
芭蕉が詠まなかった松島でも
松島や牡蠣も帆立も花の春
と詠んでいる。結構優雅な旅だったのかもしれない。
月山の句は圧巻だ。
月山の雪に埋もれて年暮れぬ
月山の雪崩の後の月夜かな
そして、藤さんは月山にも登る。
生きかはり死にかはりして月あふぐ
生き死にも束の間のこと今日の月
月山を詠んだ句は20を数える。
一句一句に土地との新鮮な出会いが詠まれてをり、その発見を藤さんと共有できるのが楽しい句集だ。
最後の、
熱燗や俺の細道六百里
には、旅をやり遂げた達成感と安堵感が広がる。
猛暑の中だが、よい句集を読ませていただいた。お贈りくださった藤英樹さんに厚く感謝したい。

花の夢『俺の細道』てふ句集

藤英樹著
句集『俺の細道』
喜怒哀楽書房刊1980円