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花の昼五山第一建長寺

小山正見

2日前の浅草の桜は満開に程遠かった。
そんなわけで、鎌倉の桜にもあまり期待していなかった。
バスの中から見た若宮小路の桜もさほどでない。
だから度肝を抜かれた。
見事な桜だ。建長寺の山門をバックに咲き満ちている。

取り敢えず一礼をして春の寺

あまりの見事さに開いた口が閉まらない。見ると道端に君が代で歌われるさざれ石がある。
見たものを何でも句に詠んでいく。

枝垂れたる桜の下のさざれ石

満開と見えた桜には、よく見るとまだまだ蕾が残っている。

満開もまだまだ咲くといふ桜

目を周囲にやる。建長寺にはいろいろな建物があり、それぞれの道が続いている。専門道場と書かれた道の奥には桜の木は一本もない。

花はなき専門道場への道

修行に花は不要なのだろう。

方丈庭園に入る。一人だけ座禅している客がいる。

坐禅せる男一人や花の寺

方丈の廊下に座り込み庭と向かい合う。鶯の声が聞こえる

深山に鶯の声建長寺

幼い子の手を引いてお母さんが通る。ぬいぐるみを抱いた子が「お庭怖い、お庭怖い」と言いながらぼくの前を通り過ぎていった。お母さんが「お庭怖くないでしょ」と不思議そうに応える。

花の風お庭怖いと言い出す子

目の前に心字池が広がる。

心字池つくづく春の光かな

奥の半僧坊に向かう。タクシーから結婚式の前撮りのカップルが降りてくる。しばし見とれてしまう。

見つめ合ひ手を握り合ひ花の下

「如何にも」という演出だ。

半僧坊は急な階段の更に上であった。不甲斐ない話だが、そこまで登る元気がない。

花の寺急階段の先の先

帰路、男二人が向かい合いお弁当を食べている姿に出会った。

花の下男二人のお弁当

今流行りのボーイズラブかもしれない。
何だか疲れて鎌倉駅まで歩く気にはとてもなれなかった。

花の昼五山第一建長寺