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やうやくに蝉時雨とはなりにけり

小山正見

「色んなところに行ってますね!」とか「精力的ですね」などとFacebookやInstagramを見た友人から言われる。本人はその気はないのだが、見ようによっては生き急いでいるように見えなくもない。
写真の場所は杉並区の蚕糸の森公園である。「蚕糸」は「さんし」と読む。養蚕の「さん」だ。
友人から日本舞踊の会の案内をいただいた。その会場のすぐそばにあった。駅で言えば、地下鉄丸の内線の東高円寺である。かつて農林水産省の蚕糸試験場があった場所だ。
公園の中から聞こえてきたのは、「蝉時雨」である。今年はじめて聞く「蝉時雨」だ。
朝、一匹の蝉の死骸が我が家の玄関に落ちていた。
「そう言えば、今年は蝉の声を聞かない」
一匹や二匹の蝉が鳴いていることはあっても、「時雨」とは程遠い。
暑過ぎて、蝉が羽化しないという話を聞いた。
蚕糸公園の蝉時雨を聞いて、ちょっとほっとした。
日本には、約30種類の蝉が生息しているというが、子どもの頃はアブラゼミが圧倒的に多かったように思う。それが最近はミンミンゼミが増えた印象だ。
本来ミンミンゼミは、標高の高い涼しい場所を好む蝉だ。それが都市部で増えたのは、温暖化と矛盾するようだが、都市部の緑化と関係があるとの説もある。
芭蕉の有名な句に
閑かさや岩にしみ入る蝉の声
がある。
芭蕉の聞いた蝉の声はいったいナニ蝉かという論争があった。
言い出したのは、斎藤茂吉。アブラゼミだと主張した。
これに対して、「芭蕉が立石寺に立ち寄った時期にはまだアブラゼミは鳴いていない」「岩にしみ入るという表現はアブラゼミの鳴き方とはそぐわない」という反論がされた。
現地調査の結果、ニイニイゼミと結論づけられたらしく茂吉が誤りを認めたらしい。
もう立秋が過ぎた。暦の上では秋である。
これからヒグラシやツクツクホウシが鳴き始める時期になるが、ちゃんと鳴いてくれるだろうか。