【大好評】「咲満ちて小山正見の俳句フォト カルタ」販売中!

反り返り蕊を護りぬシクラメン

小山正見

毎年十一月に館林の人からシクラメンをいただく。とてつもなく立派な鉢だ。それから数ヶ月間、ぼくはシクラメンを楽しむことになる。
真っ赤な花弁が密集し、直立しているシクラメンには独特の美しさがある。
忘れないように気をつけてはいるのだが、時々水をやり忘れる。するとたちまち、全部の花がヘナって倒れてしまう。慌てて溢れるほどの水を与えると数日で元に戻り、胸を撫で下ろす。しかし、人間の体と同じで一度痛めた体は完全にはもとに戻らない。
そんな管理の悪さもあり、四月の声を聞く時には、既に花は乱れている。
教えていただいた通りにへたった花や葉っぱを丁寧に取り除くと、次から次へと花芽が首をもたげることがわかった。こんなに生命力が強いのかと驚く。
知っている人には常識だろうが、その花弁を見て、シクラメンの花は下を向いて咲くと知った。にもかかわらず花弁は反り返り上を向き、ご存知のシクラメンの花になるのだ。
調べてみたらいくつかの理由があるとわかった。
シクラメンは冬に雨が多い地中海の沿岸が原産地であり、下向きに咲くことで雨や雪が花の中心に入ることを防いでいるのだそうだ。虫が下から入ることで受粉の効率を上げるという理由もあるらしい。
良く考えられているものだ。
シクラメンの蕊を繁々と眺めたのは初めてだ。
上手く管理すれば、次の年も咲かせることが出来ると言う。
少しチャレンジしてみたい気分になってきた。