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意味もなくボール持つ手や春の午後

小山正見

校庭に脚を踏み入れると、子供たちの甲高い声が響いていた。もう、新学期が始まったのだ。学童保育の子供たちだろう。無邪気な元気さが微笑ましい。駆け回るのが楽しくてたまらないという感じだ。
地元の小学校に俳句の授業の打ち合わせで訪れた。
桜の木に緑が増え始めたと思ったら、もう花水木がしっかり花をつけている。銀杏が小さな葉を無数につけている。
打ち合わせの時間まで、少し余裕があったので、遊んでいる子供たちを眺めていたら、一人の男の子が、ぼくのそばに来て
「誰?」
と聞いてから、気がついたように
「あっ、俳句の先生だ」
と言う。去年教えた子がぼくの顔を覚えていたのだろう。
「ねぇ、俳句作って!」
とぼくにボールを渡してきた。
時々、子供は無理なことを言う。
俳句は季語と何かの組み合わせだ。
季語は取り敢えず「春の午後」に決める。それに渡されたボールを持ったまま、四、五秒考え、
《意味もなくボール持つ手や春の午後》
とつぶやいたら子供は
「ふーん」
と言ったまま向こうに行ってしまった。ぼくの手にはボールだけが残された。
新しく担当になった先生と、年間のスケジュールについて、確認した。
この学校で最初に授業してからすでに十年以上になる。
初めての頃の子供はすでに社会人になっているかもしれない。
毎年続けて呼んでくださっていることに感謝。あと何年できるかわからないが、少しは「意味のある」ことをしなくてはと思った。