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振り向けば石蕗の花の黄そこに在り

小山正見

「石蕗」(つはぶき)と書いて、「つは」とも読む。
鮮やかな黄色の花だ。花が少なくなる冬に咲く。鮮やかな黄色なのに、静かで控えめな感じがするのは、ぼくだけではないだろう。
いかにも、振り返ったら、そこにあったというような風情なのだ。
一つには、石蕗の花が日陰や半日陰の土地を好むからであろう。表通りというより、どちらかと言うと裏通りが似合う。
多くの花が外国由来だが、石蕗の花の原産地は日本である。
九州では、昔石蕗を食用にしたとの記述が牧野富太郎博士の『牧野日本植物図鑑』にあるらしい。
茶道では客を茶室に導く露路に植える代表的な花の一つとされる。茶花として 茶室に控えめに活けられることも多い。
昔から多くの俳人が石蕗の花を題材に句を詠んでいる。

石蕗の花 咲けば人にも 遇はれけり 与謝蕪村
あたたかな雨が降るなり石蕗の花 山口青邨
無に帰する足跡ばかり 石蕗の花 伊丹三樹彦

石蕗の花の黄を今一度目に留めてみたいものである。

都政新報12/9付です。