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新涼や読経の響く九品仏

小山正見

都政新報8/25付 「暮らしを楽しむ俳句フォト」45

自由が丘駅前の再開発が進んでいる。来月にも新しい商業ビルが開業するらしい。その自由が丘に降りて、ふと九品仏に行きたくなった。
大井町線の九品仏駅からは目の前だが、自由が丘から歩いてもそれほどの距離ではない。九品仏川を埋め立てた緑道をのんびり歩けば15分ほどだ。
九品仏とは、九体の阿弥陀如来が安置されたところから来た名前だが、正式には「九品山唯在念佛院浄真寺」という浄土宗のお寺である。
境内は別世界だ。一本足を踏み入れると蝉の鳴き声が急に大きくなる。楓の緑が広がり、参道に覆いかぶさる。本堂の横に立つ大銀杏は世田谷区の名木100選に選ばれているそうだ。
まるで音楽のように読経の声が響いてくる。木魚の音がリズムを刻む。金色の本尊の釈迦如来が堂内に浮かび上がる。
本堂に向かい合う3つのお堂に、3体ずつの阿弥陀如来が静かに座っている。九体の阿弥陀如来像はどれも同じように見えるが、結んでいる印がそれぞれに違うらしい。思い立ってお神籤を引いてみた。年甲斐もなく中身が気になる。
静かな境内に読経の声と蝉の声が交互に響く。暑さは残っているが、吹く風は涼しい。木々の葉には少しずつ黄色が混じり始めている。秋はすぐそこまでやってきているのかもしれない。