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神無月お大師さまのさらし飴

小山正見

 川崎大師の表参道・仲見世の入り口に店を構えているのが、松屋総本店や評判堂である。両方とも「飴(あめ)」の店だ。中でも「咳止(せきどめ)飴」が有名だ。
 厄よけで知られる川崎大師は、正月には多くの初詣客が訪れる。昨年は10年に1度の「大開帳奉修(だいかいちょうほうしゅう)」で、特別な赤札が授与された。
 私もそれが欲しくて参詣したが、並ぶ人の列に恐れをなして、すごすごと退散した。
 川崎大師の歴史は古い。創建は1128年というから、900年近く昔だ。
 武士の平間兼乗(ひらまかねのり)が空海の木像を見つけたことが始まりだそうだ。正式名称の「平間寺」も、ここから来ている。
 江戸時代になって、川崎大師は大いに栄えた。「火難除(よ)け」「盗難除け」「病気平癒」に効くとされ、川崎詣では江戸の庶民の人気を集めたそうだ。
 飴の松屋が門前に店を開いたのは昭和の初めとされているが、御利益があり安価な飴が絶好の土産物になったのは想像に難くない。
 その咳止飴の元になったのが「さらし飴」である。包丁でまな板をとんとこリズムよく叩(たた)きながら切り出すパフォーマンスがまた受けた。
 店頭で見ていると少しも飽きない。この実演は江戸時代にさかのぼるようだ。
 このとんとこ叩く音は「音で厄を祓(はら)う」「包丁で悪を断つ」という意味を持つという。
 寒さはこれからが本番だ。インフルエンザもはやってきている。正月を待たずにお参りし、帰りには咳止飴やさらし飴を求めたらいかがだろう。
 現実的な御利益にもつながるかもしれない。

東京新聞川崎阪「小山正見のかわさき俳句フォト」です。どうぞご覧ください。https://www.tokyo-np.co.jp/article/448010