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総身に金木犀を浴びに行く

小山正見

金木犀の季節である。例年より若干遅い気がする。金木犀の開花期間は結構短い。せいぜい1週間から10日前後ではないか。それに雨が降るとたちまち散ってしまう。朝起きたら、木の下がオレンジに染まっていたということも度々である。
ぼくは金木犀のオレンジ色に惹かれるが、一般的には「香り」の花として認識されているのではないだろうか。
後藤比奈夫に

木犀の匂ひの中ですれ違ふ

がある。やはり匂いだ。
梔子(くちなし)や沈丁花、ジャスミンなども強い香りを持つ。子どもの時から鼻が悪いぼくでも、これらの匂いは区別がつく。
中でも梔子の甘い香りにはうっとりする。渡哲也の「くちなしの花」の歌も大好きだ。ある時、若い人に「いい歌だぞー」とこの歌をかけたことがある。あまりのテンポのゆっくりさにたまげた。まさに「昭和」そのもの。時代が変わっていることを実感させられたことがある。
金木犀の香りは虫を惹きつけ受粉を促すためと思い込んでいたが、実は違うらしい。
日本の金木犀のほぼ全てか雄株なので実際には受粉の役割を果たさない。
金木犀の香りはかつて虫を呼んだ「過去の名残」にすぎないらしい。
トイレの芳香剤の匂いとして長く使われてきたので金木犀の香りを嗅ぐと「トイレを思い出す」という人がいる。これは残念な記憶だ。