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雑踏を横目に虫の声虫の声

小山正見

ふと虫の声が聞こえた。確かに虫の声だ。
「こんなところで」
街のど真ん中、雑踏の中だ。どうやら、道路ぎわの花壇からのようだ。
「都会の真ん中に虫がいるのか」
不思議な気分だった。
俳句では、「虫」とは秋の鳴く虫のことを指す。鈴虫とかコウロギとかキリギリスのことだ。
子供の頃は、虫籠に入れて飼ったこともあった。
コオロギの「コロコロ」として柔らかい鳴き声も好きだが、鈴虫の澄み渡った声は何とも言えない。
平安貴族は、虫の声を風流なものとして楽しんだ。中国や韓国にも日本と同じような習慣があるらしい。
街は人間が支配していると考えたら間違いだ。アスファルトの隙間から草が生え、
夜になれば虫の声が聞こえる。広い公園に行けば、昼間から虫の合唱だ。都会も自然に満ちている。
虫の声が聞こえたら、足を止めてみよう。少しだけでも風流の気分を味わうことができるかもしれない。

都政新報9月30日付「暮らしを楽しむ俳句フォト3」