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初秋の食欲不振にロースかつ

小山正見

歌舞伎の「牡丹灯籠」を観たあと、千駄木に向かった。三遊亭圓朝ゆかりの全生庵で幽霊画展が開催されていると教えていただいたからだ。
千駄木駅を降りて、腹が減っていることに気がついた。時計を見たら午後1時を過ぎている。
「何を食べようか」
蕎麦?うどん?食べる気がしない。パン類も嫌だ。中華も食指が動かない。腹が減っているのに食欲がないのだ。
ところが1つだけ食欲をそそるものがある。それが「かつ」だ。とんかつならだいたいいつ食べても美味しく感じる。スマホでとんかつやを探した。
「あった」
駅から4、5分。とんかつ三矢である。
かつは美味かった。ご飯も味噌汁もキャベツもお代わり自由。極細に切られたキャベツの味は抜群。とんかつ屋のキャベツはどうしてこんなに美味しいのだろうか。たっぷりお代わりをしてしまった。
昔はひれかつ志向だったが、今はロースだ。衣の上から脂身を食い千切る感覚はこたえられない。
「こんなに食べてしまっていいものか」と思いながらも満腹感が心地よい。
「さあ、これから幽霊画だ」
こんなに食べたら幽霊に恨まれるかもしれない。