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新樹光木製ウォッチ販売車

小山正見

「木製ウォッチ?」
川崎駅の構内である。キッチンカーのような車の中に、確かに木製の腕時計が並んでいる。
「今時?」
と思ったが、何か新鮮だ。もちろん中まで木製の訳はない。時計の周りのデコレーションやバンドが木でできているだけだ。それでも一瞬立ち止まってしまった。
ぼくが最初に腕時計をしたのは高校の時だった。入学祝いにSEIKOの腕時計をもらった。もちろんリューズでネジを巻くものだ。そのうち自動巻きの時計ができ、クォーツに変わった。その度に時計を買い替えたような気がする。携帯電話を持つようになると、腕時計を持つ必要がなくなった。時計は世の中に溢れていた。
しばらくの間、時計なしの時期もあったが、再度持つようになったのはApple Watchに心を動かされたからだ。
ぼくは初代からの愛用者だ。
まず、万歩計も要らなくなった。携帯の着信はウォッチでわかる。それにかっこいい。
当時はApple Watchを持っている人はレアと言ってよいほど少数派だった。
たまに目ざとく見つけて
「それApple Watchですよね」
と感嘆の眼差しを向けられた。そんな時は、得意げな顔で自慢する。ウォッチがコミュニケーションツールになった。
Suicaが搭載できるようになり、現在は健康管理の指標としても使える。
血圧や血糖値は無理だが、睡眠ログは役に立つ。腕時計をして寝ることにも慣れた。
出かける時に「今日は雨が降る?」と聞くとウォッチが答えてくれる。予定も把握できる。便利だ。
しかし木の温もりはない。
アップルの戦略に完全に取り込まれていると言われれば、ぐうの音も出ない。