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とんかつの脂の匂ひ蜆汁

小山正見

とんかつに味噌汁は付き物だ。具はさまざまだが、ぼくは蜆汁がいい。箸に当たる蜆の感触、コクのあるだしが何とも言えない。とんかつの脂っこさが途端に消える。
 「蜆汁」は春の季語だ。
 蜆と言えば、宍道湖、松江である。
 NHKの朝ドラ「ばけばけ」で松江はずいぶん賑わっているらしい。
 俳人辻桃子は「宍道湖の今朝の濁りや蜆汁」と詠んだ。
 蜆には旬が年に2回あるとされているが、産卵を控える春が1番美味だという。身が肥え始め、味が濃く、だしがよく出るからだ。
 かつて、神保町に「いもや」というとんかつ屋があった。いつ行っても行列だった。
 メニューはロースかつとヒレかつの2つだけ。それに大鍋から無造作に掬った蜆汁が付く。
 煮出したような蜆汁が絶品だった。
 とんかつを食べる度に、ぼくはいもやの蜆汁を思い出す。

都政新報2/24付「暮らしを楽しむ俳句フォト」です。