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夏来る憎つくき電信柱かな

小山正見

今から70年近く前になるが、ぼくは写真の中央に立つ電信柱での出来事を鮮明に覚えている。
確か、小学校5年生の夏だった。ぼくは自転車に乗り、この曲がり角に差し掛かった。その時に、向こう側から来たのは5トン積みのダンプカーだった。
目の前に電信柱。ぼくは逃げ道を失い、自転車はダンプカーの後輪にあっという間に巻き込まれた。トラック特有の後輪差で巻き込まれたのだ。
自転車の潰れる音がした。
奇跡的に、ぼくは巻き込まれずに、跳ね飛ばされた。今はマンションの壁になっているそこは、幸いにも柔らかい垣根だった。あちらこちらに擦り傷を作ったが、頭も打たず一命を取り留めた。
ぼくは運転手におんぶされて家に戻った。それからのことがどうなったか、ぼくの記憶にはない。
この事故で、ぼくは生まれて初めて死と向き合った。
この事故の後、数ヶ月は怖くて自転車に乗れなかったが、その後京浜国道を南下し、戦艦三笠を見るために、横須賀まで自転車で行った。トラックが何台もぼくの肩に当たりそうになった。
よく親が許可したものだ。
大人になってから、墨田区の業平橋から勤務地の第二辰巳小学校まで、ドロップハンドルのスポーツ車で通ったことがあるが、その頃には、危険を強く感じるようになり、そのうちやめてしまった。
60歳を超える頃からは、自転車そのものに乗るのをやめてしまった。
今でもあの電信柱を見るたびに、あの日の事故が脳裏に蘇る。