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梅雨晴の狭ひながらも露天風呂

小山正見

【銭湯紀行】その13
学芸大学 ぽかぽかランド鷹番の湯

学芸大学は、ぼくの帽子を作ってくれる帽子屋さん「Virlidian」があるところだ。
この日は風呂に入るために降りたのだが、ここが「鷹番」であることに改めて気がついた。
鷹番には、戦前に母が住んでいた家があった。
ぼくは、一度だけ母に連れられてその場所に行ったことがある。
この日、ぼくは母と行ったであろう道を辿ってみた。記憶の中では、緩やかな坂の途中にあったはずだが、行ってみると坂そのものがなかった。
すでに婚約をしていた母を奪い取った正孝は、母とこの道を幾度となく歩いたことであろう。
母は親の怒りを買い、ある時は家の奥の部屋に閉じ込められたと書いている。(主人は留守、しかし・・・)そして、次の詩を「その頃の自分のことかもしれない」と述べている。

お前のことを 小山正孝

お前のことをうたひたいのだ
室の真中に立つたままでゐる
とほうにくれてゐるやうなお前のことが
私の心をとらへてゐるのだ
こちらを見てごらん 私の方を
暗いあたりでなく 窓の方を
荷物を置いてこちらへやつて来てごらん
だまつてゐないで話しかけてごらん
お前の首すじのあたりの感じが
よびかけさせたのだ
鹿のやうにおとなしいお前
床を足音もたてないで歩きはじめて
ああ どこへ行つてしまはうとするのだ
壁を抜けて どこへ お前は行つてしまふのだ

さて、鷹番の湯である。驚いたのは露天風呂があることだ。3人も入ればいっぱいになってしまうような狭い湯だが、露天であることに違いはない。梅雨の合間の晴れ間であることが嬉しかった。

湯の温度は比較的低い。様々なジェット風呂が備え付けられている。腰を揉むもの、肩に水流が当たるものなど実に様々。この辺りが売りなのだろう。外の看板にも肩たたき、ドリームバスなど様々なバスが挙げられている。
日曜日の夕方だったせいか、小さな子どもを連れたお父さんが多い。タオルと石鹸・シャンプーをセットにした「手ぶらセット」もある。
次に行く時は、母の住んでいた家の場所を確認したいと思った。