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思ひ出の詰まる校舎やカンナ咲く

小山正見

「もうカンナか!」
カンナの葉とはこれほど美しかったのか。見惚れる思いだ。その向こうに見えるのは八名川小学校の校舎だ。今年開校110年を迎える。
ぼくは、赴任してからこの学校で6年を過ごした。その最初の年のトピックは「学習塾」との連携だった。珍しかったのだろう。これが大きく新聞に取り上げられた。
裏を明かせば、算数の指導をしてくれる適当な先生がいなかっただけの話だ。
「昼間は時間が空いていて、算数の指導ができる人はどこかにいないか?」
そしてたどり着いたのが塾の先生だった。条件にぴったりだ。
これが「塾との連携」とになった訳だ。
記事の見出しはセンセーショナルだったが、内容はかなり正確に書いてくれた。
この時の記者がKさんである。実際に会ったのは1回か2回だったかもしれない。
それから20年以上である。K記者とは細々と連絡が続いていた。
それが、どういうわけか「会いましょうか」という話になった。
先日、ぼくは新聞社にK記者を訪ねた。彼は、応接室をとってぼくを待っていてくれた。渡された名刺には「論説委員」とあった。
論説委員と言えば、社内では最も経験と権威を兼ね備えている役職だろう。
しかし、Kさんの素振りからは、そうしたものを微塵も感じさせるものはなかった。
昔語りから始まり、連載している「かわさき俳句フォト」や感泣亭の話。YouTubeの「大花野チャンネル」も彼は観てくれているようだった。
気がついたら、話を始めてから2時間が経っていた。もしかしたら話を引き出す天才記者の術中に見事にはまり込んだのかもしれないが、話したいことを思い存分話せた充実感がぼくにはあった。
立ち上がって、握手をして別れた。
「こんなに大きく、背が高い人だったのか」
とぼくは初めて気づいた。彼は、新聞社の玄関の外で大きな背を小さく丸めぼくを見送ってくれた。