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仕事終え春満月に迎えらる

小山正見

懐かしい写真が出てきた。今から16年前の春。3月31日である。この日、僕は38年間の教員生活にピリオドを打ち、江東区立八名川小学校を最後に退職をした。
ちょうど満月だった。正確に言えば、満月の翌日だった。夜道に38年間が詰まっているような感慨があった。
そして、この時からぼくの俳句フォトが始まった。
実は、当時話題になっていたiPhone3Gを購入したのが3月20日である。今のiPhoneより小ぶりの丸っこい筐体が気に入っていた。
しかし、このおもちゃのような道具で一体何ができるのだろう。
発見したことが二つある。
一つは、手書き入力ができることだ。当時は、フリック入力は普及し始めたばかりでとても使えなかったという事情もある。早速専用のペンを手に入れて試してみた。俳句程度の短い文章であれば、それほど苦労せずに入力できることがわかった。

もう一つは、「フォト一句」というアプリである。書体は、明朝体やゴシック体など数種類に限られてはいるが、写真に重ねて文字を入れることができるアプリだった。今は、すでに存在しないと思うが、このアプリがぼくを俳句フォトに導いたと言っても過言ではない。
iPhoneの写真機能と実に相性のよいアプリだった。
4月1日からは、区の教育委員会の相談員として区役所に勤務することになったが、暇な時間は格段に増えた。
俳句の出張教室をするようになると、江東区中を歩き回ることになった。
余りある時間を活用してできるだけ歩いていくことを心がけた。行きは無理でも帰りはゆっくり寄り道をすることも可能だった。江東区の端っこの東大島の学校からでも1時間半もあれば、区役所に戻れた。東雲の学校から歩いて戻ったこともある。区内の様子がよくわかった。緑道が東陽町から亀戸まで続いていることもわかったし、区内の全ての小学校の位置も把握できた。
思いついて、道々で写真を撮り、俳句フォトの作品に仕上げ、「行き当たりばったり江東区百景」としてFacebookにアップしたりした。百景のはずが、そこに留まらず、150作品程度まで増えた。懐かしい思い出だ。

この句の季語春

春満月はるまんげつ

「春の月」の言い換えの季語です(傍題)

春の月:春の夜に浮かぶ、うるんだようにやわらかな月。