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銭湯紀行

俳句フォトエッセイ

宵闇の路地を曲れば湯の匂ひ

【銭湯紀行】22入谷白水湯入谷と言えば、まず頭に浮かぶのは「恐れ入谷の鬼子母神」というユーモラスな言葉だ。鬼子母神は安産や子育ての神様だ。雑司ヶ谷にも鬼子母神がある。ぼくはその境内での赤テントの公演、唐十郎作の『盲導犬』を見たことがある。満員のテントの中にシュールな緊張感が走っていた。それはさておき、入谷である。古い下町が残っている。建て直された大正小学校にも窓の形などに昔のモダンが色濃く残っているし、昔の建物のままの酒屋さんも健在だ。地域の稲荷信仰も廃れたようには見えない。その中に、現代的な和風を売りにした民泊施設が点々と生まれている。白水湯は、そんな街角を曲がった場所にあった。

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歌舞伎町抜けて銭湯望の夜

【銭湯紀行】21新大久保万年湯立川市の学校で俳句の授業に出かけた。ちょうど授業参観で多くの保護者が参観していた。授業参観だと、子どもたちの集中度があがり、こちらも授業がしやすくなる。その帰りにちょっとした買い物があり、新宿に出た。ふと、銭湯に行きたくなった。新宿にスーパー銭湯があることは知っている。入浴料は3000円。今日は普通の銭湯がいい。スマホで探してみた。すると、あった。新大久保通りの万年湯だ。久しぶりの新宿。歌舞伎町を抜けて、新大久保に向かう。歌舞伎町への入口は、何と「ゴジラロード」だ。突き当たりの新宿東宝ビルの屋上に巨大なゴジラヘッドが設置されているからだ。

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秋の雨炭酸泉の湯の加減

【銭湯紀行】20元住吉今井湯今井湯は我が家から一番近い銭湯である。取り上げるのは2回目である。歩いて15分だ。しかし、なかなか家から出かける気にならない。この日は、武蔵小杉で行われている椿句会の帰りに寄った。椿句会は、今回で648回目。月に一回として、54年の歴史を持つ。数年前Nさんに頼まれ、指導を引き受けることになった。会の伝統で6句出し、8句選が続いている。ぼくが始めたのは、毎回の句会報を書くことぐらいだ。久しぶりの今井湯に入って驚いたのは、券売機が新たに設置されていたことである。今はこの方式が銭湯の主流になっている。番台で金銭を取り扱わない方が安全で、管理も楽だからだろう。

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秋驟雨逃れるやうに湯の煙

【銭湯紀行】19学芸大学千代の湯雨が降ってきた。ぼくは銭湯に逃げ込むことを考えた。学芸大学の千代の湯だ。以前、同じ学芸大学の鷹番の湯を紹介したが、実はこの千代の湯の方が駅から近い。ここに来るのは3回目だ。それにしても、学芸大学の商店街は人に溢れ、活気がある。まず、駅前に本屋があるのが素晴らしい。おかしのまちおかやカルディ、ちよだ鮨などどこにでもあるようなチェーンの店も多いが、お洒落なカフェや喫茶店が何軒もある。西口のドトール珈琲農園のホットケーキも美味しい。さらに鰻屋まである。ぼくの行きつけの帽子屋viridianは、鰻屋を探しに歩いている時に偶然見つけたお店だ。

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透明な泡に包まれ秋に入る

【銭湯紀行】18大垣天然温泉コロナの湯銭湯紀行の①が大垣だった。今回は再びの大垣である。午前中に大垣に着く予定だった。ところが新幹線の切符が取れない。考えてみれば夏休みだ、それもお盆である。新横浜12時21分発のひかりにようやく席が取れた。それでも15時には、大垣の駅の美濃味匠で150円のコーヒーを飲んでいた。余談だが、美濃味匠の卵かけご飯は安くてうまい。大垣には町の銭湯がもう一軒あったはずだが、休業中というので、スーパー銭湯「大垣コロナの湯」に行くことにした。ここは、コロナワールドという巨大な複合施設の中にある。この名前、新型コロナ感染症の流行期には、相当に肩身がせまい思いをしたに違いない。

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熱風の中に涼風アウフグース

【銭湯紀行】17川崎朝日湯源泉ゆいる連載のお礼と総集編の打ち合わせに東京新聞の川崎支局に向かった。支局長にお目にかかるのもこれが最後になるかもしれない。支局長は丁寧にぼくを出口まで見送ってくれた。ぼくには一つの仕事を終えた安堵があった。「さて」と考えた。「そうだ、ゆいるに行こう」ゆいるは浜川崎の近くにあるスーパー銭湯だ。結構評判が高い。川崎駅から送迎のバスもあるが、臨港バスに乗ることにした。かつて取材した大島劇場の先、鋼管二丁目で降りて歩く。ゆいるはスーパー銭湯としては意外とコンパクトだった。1階は食堂、2階が風呂。そして3階が休憩スペースになっている。料金は高めだ。

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鶴亀の戯れてゐる夏の夕

【銭湯紀行】その16東大島春の湯歴史のある銭湯なのだろう。見事な欄間彫刻の透かし彫りである。よく見ると鶴亀が戯れている。長寿への願いが込められているのだろう。江東区の某小学校で俳句の教員研修会を行った。学校が建て替え改装中だったので、仮校舎だった。何度も行って知っている場所なのだが、何となく記憶が曖昧だ。いつものことだが、よく調べもしないで行くので間違えたらどうしようと不安があった。無事辿り着くと、新しい校長先生が迎えて下さった。副校長先生もここでは初対面だったが、他区でぼくの授業を受けたことがあり、句集『大花野』も読んでいて下さった。

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不純とはいつたい何か梅雨深む

御徒町にある「不純喫茶」については、【銭湯紀行】その15で若干触れた。奇妙奇天烈で何となく「反道徳」的な匂いがする。そして、そこに魅力がある。すぐ思い出すのが「不純異性交友」という言葉だ。大人が未成年に対して性的な交際をすることは、青少年保護条例などで禁じられている。当然の話だ。しかし、「不純異性交友」にはそれとは違ったニュアンスがある。未成年同士の少し危なっかしい交際を「そんなことはしてはいけません」というニュアンスで大人の立場から表現したものだろう。ぼく自身については、その方面には全く奥手だったので縁遠かった。

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燕湯や燕飛ぶ飛ぶ燕飛ぶ

【銭湯紀行】その15御徒町燕湯三郷の日だった。認知症のデイサービスで利用者さんと俳句を楽しむ日だ。面白い俳句ができる。もう少し食べたいものは揖保乃糸食べるならうどん屋さんのかき氷この辺のかき氷ならあそこだな田舎には田舎の味のかき氷帰りの電車が寒い。最高気温が23度というのに、冷房ががんがん効いている。長袖を2枚重ねているのに冷気が染み渡ってくる。どうにかならないものか。冷え切って風邪をひく前に「風呂で温まろう」。そう考えて銭湯を探した。千代田線、湯島駅から歩いて5分の場所に燕湯がある。「今日はここにしよう」。位置としては、御徒町の松坂屋より、少し秋葉原に寄ったところだ。行ってみて驚いた。

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梅雨深し薪で焚きたる湯の温み

【銭湯紀行】その14奥沢松の湯ネットで調べたら、奥沢駅から2分の場所に銭湯があることがわかった。行ったら、シャッターがまだ閉まっていた。てっきり営業開始を午後3時と思い違いしていたのだ。営業開始は、3時20分。火曜日と水曜日は休みである。近くで時間を潰して、再度挑戦。フロントではなく、昔ながらの番台。靴箱の鍵がロッカーの鍵を兼ねている。ぼくの前にお客さんは一人だけ、そのうちおじいちゃんが一人、若い男が一人。天井も高く広い洗い場で出会ったのは、結局この3人だけだった。浴槽は3つ。それぞれ違ったジェットが楽しめる。横からの吹きつけるもの、足元から湧き上がるもの、渦を巻くように流れるもの。