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俳句フォト

俳句フォトエッセイ

向日葵の東を向きてたぢろがず

最近は、お花屋さんに行くと、室内で飾る小ぶりの向日葵を見かける。しかし、ぼくは見上げるほど大きく雄々しい向日葵が好きだ。向日葵はお日様の動きを追いかけると思われているが、それが誤解であることを『ひまわりはなぜ東を向くか』(瀧本敦著中公新書)で教えられた。成長した向日葵が東を向いて固定されるのは、朝の太陽光で花に宿った露が乾きやすく、受粉を手伝う虫が集まるのを促すのが理由らしい。それにしても、向日葵が一斉に同じ方向に花を向けている姿は壮観である。向日葵の原産地はアメリカであるが、食用の油が採れ、当時動物性脂肪が禁じられていた帝政ロシアで盛んに栽培されん、一大生産地となった。19世紀の話だ。

俳句フォトエッセイ

始まりは川崎市役所燕来る

「燕来る」は春の季語だ。「燕の子」は夏。そして「燕帰る」が秋である。「小山正見のかわさき俳句フォト」は春に始まった。東京新聞川崎支局から依頼が来たのが2024年の3月の初め。連載の開始は4月だった。しょっぱなに何を取り上げるか、今の川崎の発展を象徴するものが何かを考えた。そして辿り着いたのが、市役所の展望台だった。ぼくが子どもの頃、川崎は悪名高い公害の街だった。煤煙で空が煤け、川崎喘息か蔓延していた。それが川崎の発展の誇りでさえあった時代があったのだ。公害反対の運動が幅広く行われ、行政も本腰を入れるようになり、公害は克服された。市役所の展望台こそ、公害克服の象徴的な場所である。

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蓮の花浄土のままに光りをり

「何という美しさか」蓮の花である。一面の緑の中に浮かび上がる薄桃色の花。見つめれば見つめるほど、花そのものが淡く発光しているように見える。蓮は朝の花だ。午前7時から9時頃までが見頃で、午後には花を閉じる。蓮の花といえば、何と言っても不忍池だ。早起きして、眠い目を擦りながら満員電車に揺られて上野に向かった。メトロ銀座線の上野広小路駅を降りれば、ほどなく不忍池だ。目に入ったのは、一面緑に覆われた蓮池。間違いなく日本を代表する蓮の名所の一つである。その中に薄桃色の花が点々と咲いている。見物人も多い。カメラを担いでいる人もいるが、絵を描いている人もいる。キャンバスには、蓮の葉の緑が躍動している。

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東京のどこもかしこも大暑かな

今年の梅雨は涼しかった。東京で30度以上の真夏日を記録したのは、たったの2日しかない。それが突然暑くなった。こう、急激に気温が変わると体がついていけない。梅雨明けの空も街もギラギラしている。もうすぐ二十四節気でいう「大暑」である。一年中で一番暑い時期だ。今年の大暑は、7月23日から8月6日頃。おそらく今年も耐え難い暑さが続くのだろう。ただ、ぼくには楽しみがある。土用の丑の日だ。「鰻を食べたい」近年鰻は高騰し、とても手が出せない。しかし、この日ばかりは無理してでも鰻を食べることにしている。土用の鰻を定着させたのは平賀源内とされている。

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街守るカメラの上に燕の巣

今年は、燕を見かけないと思っていたら、立て続けにその姿を見た。街なかだ。商店街を低空で飛んでいく。ぼくの方に向かって一直線に飛んできたかと思ったら急に反転して見えなくなった。その鋭い身のこなしに、佐々木小次郎の「燕返し」が頭に浮かんだ。辺りを見回すと、パチンコ屋の軒先の防犯カメラの上に巣があった。親鳥が、すでに自分と同じくらいに成長した雛に餌を与えているところだった。昔から燕は縁起の良い鳥とされてきた。「燕の巣がある家は繁盛する」という言い伝えもあるほどだ。燕を幸運の象徴とするのはヨーロッパでも同じだ。

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「ココ」が良し「ここ」が最高梅雨明ける

幸区河原町ハッピーロードにあるコミュニティーカフェ「メロディー・ココ」に向かった。月1回の「ココ食堂」が行われるからだ。2年4カ月続けてきた連載「小山正見のかわさき俳句フォト」は、今回で最終回を迎える。第1回は川崎市役所の上からの富士山の写真だった。公害を克服し発展する川崎を捉えたいと考えたのだ。それから40回近く、川崎の良さをさまざまな形で伝えてきた。王禅寺の楓(かえで)や多摩川下流の干潟など、川崎の自然の美しさに感動させられた。サッカーのフロンターレやバスケットのブレイブサンダースの試合にも夢中になった。取材を重ねるうちに気がついたことがある。

俳句フォトエッセイ

街なかに本物の森梅雨晴間

大手町は、丸の内線や東西線など5路線の地下鉄が乗り入れ、地下の通路は迷路のように入り組んでいる。その間に飲食店が軒を連ねている。歩いていると自分がどこにいるのかわからなくなるほどだ。今日は梅雨の晴れ間だ。太陽を仰ぎたくなって地上に出たら、なんと森があった。「大手町の森」と洒落た看板がある。単なる緑地ではない。。草が生い茂り、木々が鬱蒼と茂る本物の森だ。この森ができたのは、2013年だという。地上38階建の大手町タワーの敷地の3分の1に当たる3600㎡を森にしようと計画された。

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噴水の瞬くうちに立ち上がる。

東京駅の中央口から歩いておよそ7分ぐらいだろうか。木造風の橋を渡ると和田倉門の跡だ。その向こう側に噴水公園がある。1961年に当時の皇太子(現上皇陛下)と美智子さまのご成婚を記念してつくられたものだ。さらに今上天皇のご成婚の機に大噴水やせせらぎなどが整備され、現在の姿になった。知ったきっかけは、NHKの「ドキュメント72時間」である。番組では、ここを訪れる人の人間模様がさまざまに描かれていた。番組の目の付け所の良さに唸ったが、ぼくも行ってみたくなった。後ろを振り返ると丸の内や八重洲の高層ビル群だが、目の前には皇居前の松林が広がり、その間から富士見櫓が見える。

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色を増す源兵衛川のカンナかな

八名川小のカンナも見事だったが、三島の源兵衛川のカンナは更に見事だった。加藤学園での授業の3回目が終わった。最後の授業は「俳句フォト」だ。各自に写真を用意してもらい、それに俳句をつける。俳句フォトは、俳句初心者にはぴったりの俳句制作法である。写真には、必ず「題材」が写っている。だから初心者でも「見えたものを詠む」ことから始められる。しかも、写真を撮った瞬間の驚きや感動が残っているので句の焦点も定まりやすい。しかしさすが高校生、言葉のチョイスがなかなか良い。コンクールに入賞できるのではないかと思われる作品もちらほら。この日は楽しみがあった。ぽん友のSと三島で会うことになっていたのだ。

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紫陽花に頬を寄せたる写真かな

梅雨時の花と言えば誰もが紫陽花をあげるだろう。東急線多摩川駅から近い多摩川台公園に足を運んだ。ここは、斜面が紫陽花苑になっている。薄日の差す梅雨の晴れ間だった。予想以上の人出である。多いのは、やはり西洋紫陽花だ。青や赤の手毬のような花が微かに揺れている。しかし、日本古来の額紫陽花も負けていない。かつては、白と青の地味な色の取り合わせがほとんどだったが、最近は色鮮やかなものが増えた。品種改良のおかげだろう。目を見張ったのは額が薄くピンクで彩られた紫陽花だった。真ん中の蕾のような花が宝石のように輝いている。