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俳句フォトエッセイ

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卯の花をはじめて知りて傘寿かな

考えてみるとぼくの歳は80に近い。それなのに、これまで卯の花を知らなかった。佐々木信綱の作詞による唱歌「夏は来ぬ」は「卯の花の、匂う垣根に」の歌詞で始まる。卯の花は、初夏を代表する花なのだ。先日、ある方に「これが卯の花」と教えていただいた。白い小花が重なり、息を飲むほどの白だった。昔の人が卯の花を愛でたのがわかるような気がした。「卯の花腐し」という季語がある。せっかく咲いた卯の花を腐らしてしまう雨という意味だ。卯の花の白を見ると、この言葉に込められた恨めしい気持ちが痛いほどわかる。もちろん若い時に卯の花を知れば、それにこしたことはなかったが、生きているうちに出会ったことを奇貨としたい。

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古墳百段登り切つたり夏盛ん

所属する梓俳句会の宿泊吟行会であった。15年前、大変にお世話になっていたTさんに誘われて、創刊から同人となった。しかし、当時は俳句のことも結社のことも何一つ知らなかった。「作品を出せ」と言われてびっくりしたというのが実情だ。それから15年。年に40句は投稿を続けている。句集『大花野』は梓の10周年記念作品募集の中で生まれた。幼稚だったぼくを俳句の世界で鍛えてくれたのが梓俳句会だ。今回の合宿吟行会の目的地は熊谷だった。高校の先生でもあるNさんが全てを取り仕切ってくれた。詳細なしおりを作って下さったが、ぼくが確かめたのは、「熊谷駅午前10時」という集合時刻だけだ。

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梅雨近し寝て寝て寝て寝て更に寝て

どうやら体がだるいのはぼくだけではなさそうだ。みんな寝ている。ここはどこだと思う?実は高輪ゲートウェイなのである。住民アンケートを無視して、JRが独断で決めたという駅名だ。操車場を削り、常識を覆した新しい街を作ろうという意欲を一方では感じる。駅も現代的だが、改札口を出るとすぐ前に高輪ゲートウェイシティが広がっている。目の前で自動運転の自動車の試乗会が行われている。テスラの展示場もある。その脇のビルの間を北に進むとあった。5階建てほどの変わったビルだ。植物の螺旋階段がビルの周りを取り巻いている。高輪ゲートウェイの駅もそうだが、今をときめく建築家隈研吾が深く関わっている。

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夏兆す元住吉の空の色

よく寝ているはずなのに朝から体が重い。歳のせいかもしれないが、もしかしたら気候のせいかもしれない。空は晴れていても梅雨が近いのだ。だるくても動き出すとそれなりにどうにかなる。勇気を振り絞って出かけることにする。元住吉駅のエレベーターは長い。いつもは、右側を歩いてのぼることにしている。じっと待っているのが耐えられないし、多少は運動になるからだ。しかし、今日はそれもカッタルイ。ぼくの記憶では、元住吉の駅は3代目だ。ぼくは、小学校一年生の時から東横線に乗って通学した。まだ、改札口で駅員さんが切符を切っていた時代だ。切符を切る手捌きもそうだが、一瞬で定期の期限切れを見つける眼力にも驚愕した。

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初夏の狗尾草の毛の気配

数年前までは、農地だった土地だ。今は、すっかり放置されている。毎週ぼくはここを通るが、見ると狗尾草が繁茂している。狗尾草は、秋の季語だ。しかし、秋になって生えてくるというわけではないのだ。狗尾草は、俳句授業の良い教材である。形が面白いし、揺れる。遊び道具にもなる。しかも身近にあり、親しみやすい。薔薇の花を授業に持ち込むには、お金がかかるが、狗尾草ならそこら中に生えている。道路端に生えている何本かを引き抜いても誰にも文句が言われない。もう穂を伸ばしているとは!かつて本で読んだことがある。人の目は出始めの頃のデジタルカメラぐらいの性能でしかない。

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絹の湯にほどける白や迎へ梅雨

電車に乗ったら、初老の紳士に席を譲られた。「ありがとう」と礼を言って腰かけたが、微妙に複雑な気分だった。大井町で降りることにした。末広湯という銭湯があると知っていたからだ。そこへ向かって歩き始めたら、目の前のビルに「おふろの王様」という看板が現れた。途端に末広湯まで歩くのが面倒になった。「おふろの王様」はスーパー銭湯だ。迷ったが、久しぶりのスーパー銭湯も悪くない。入浴料は、1500円。駅近にしては安い。タオルを借りることを考えれば、銭湯の約2倍だが、サウナにも入れて、休憩室も完備しているからこれなら悪くない。リストバンドをして、風呂に入る。人が多いことにまずびっくりする。

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ランナーの駆け抜けていく緑の夜

原宿で降りた。明治神宮の黒い森の向こうに広がっているのが、代々木公園である。代々木公園は、東京ドーム10個以上の広さがあるという。渋谷に抜けようと思ったら、道に迷った。ずんずん公園の奥に入っていってしまった。木がさわさわと揺れる。森の奥は暗い。気がついたのは、ランニングをしている人の多さだ。一人で駆けている人もいれば、大学の部活のような集団もいる。外国人も多い。もしかしたら代々木公園は夜のランニングの聖地なのかもしれない。ぼくの祖父は、この近くに住んでいた。その頃は、代々木の原といい、陸軍の練兵場だった。二・二六事件の将校たちの処刑もここで行われたという。日本最初の飛行機が飛んだのもここだ。

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地をかすめ右へ左へ梅雨燕

この日の鎌倉吟行は、季節が何ヶ月か戻ったように寒い。コートを着て暖かい格好をして出かけたのに、それでも寒い。行きの電車に慌てて乗り込んで座席に座って気がついた。周りが女性ばかりなのだ。「ひょっとして女性専用車?」何となく空気が甘い。香水のほのかや女性専用車次の駅で慌てて逃げ出した。大船駅からタクシーで向かった先は、鎌倉中央公園だった。タクシーの中は天国青葉寒細い道を辿って公園の山崎口につく。降りると寒い。雨が落ちてこないことが唯一の救いだ。柿の木に薄い黄色や白の花が咲いている。リーダー格のMさんが「ちょっと華奢だけど、これが蚊帳吊草かしら」と教えてくれる。

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小満の胡麻の香りのロースかつ

目黒の「とんき」など、何度も書いているので、ぼくがとんかつ好きであることは、ご存知かもしれない。この日は、川崎ラゾーナの中にある「かつくら」に行った。気になっていたが、入ったことはなかった。本店は京都の三条にある。関西を中心に最近は海外にまで足を伸ばしている人気の店だ。ラゾーナの「かつくら」も店構えは何となく京都風である。売りは上質な豚肉だ。メニューには「平田牧場の三元豚」などが並び、ぼくの食べた普通のロースかつでも二千円を超えた。味噌汁にもこだわりがあるらしく、オプションで様々な味噌汁を楽しめるようになっている。こんなとんかつ屋は初めてだ。

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人類は何処より来し立葵

立葵と人類がどう結びつくのか、頭の中の回路を説明することは難しい。しかし、ざっと説明すると次のようになる。早咲きの立葵→地球温暖化→気候変動→人類は気候変動を潜り抜けて来た真ん中が全て吹っ飛んでぼくの頭の中で人類と立葵がドッキングしたということだ。最近人類の歴史に関する動画をよく見る。驚いたのは、人類がネアンデルタール人やデニソア人と交配していたことだ。その証拠に現人類のDNAには2%から4%の彼らの遺伝子が見出せるとしている。彼らは滅びたのではなく、我々の中に吸収されたという。これは従来の学説と大幅に異なる。