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俳句フォトエッセイ

俳句フォトエッセイ

梅雨空に弾ける笑顔弾む声

武蔵小杉から元住吉の間に気になるお菓子屋さんがあった。「おかし工房しいの実」とかわいらしい看板が下がっている。先日、運営母体であるしいのみ会の「地域交流カフェ」の集いがあった。知ったのは、ここが知的障害者の人たちの就労を支える作業所だということだ。しいの実会は作業の中心をお菓子作りに置いている。シフォンケーキから始まって、クッキーやパン、和の素材の商品化にも力を入れている。収益は工賃としてメンバーに還元されるという。参加して驚いたのは、メンバーの礼儀正しさだ。言葉遣いやお菓子やコーヒーを運ぶ所作の一つ一つが実に丁寧なのだ。明るい声が響く。

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六月のモチーフとして七変化

場所は、多摩川台公園である。東急線多摩川駅からすぐである。先日はここで会津ワイヤー会の俳句フォトの会を行った。古墳が残されていることでも有名である。立派な古墳展示室もある。松の林の向こうに多摩川の流れが見え、なかなかの散歩コースである。この公園の登り口が紫陽花園になっている。今が見頃とあってけっこうな人出だ。キャンバスを立て、スケッチをしているかと思うと、浴衣のモデルさんを囲んでの撮影会も行われていた。紫陽花は、それほど「絵になる」ということだろう。6月の日本を代表する花と言えば、誰だって「紫陽花」と答えるに違いない。今では、種類も豊富だ。新しい品種も増えている。

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六月の葛切の味京の味

今日6月11日は、ぼくと妻の結婚記念日である。54年前のことだ。その時、ぼくは東京都の教員の職を得てからまだ2ヶ月しか経っていなかった。結婚式は、神楽坂にあった東京都の教育会館で「祝う会」形式で行った。仲人は大学の研究室の指導教官であった城丸章夫先生に頼んだ。先生は、ぼくの両親に「邦子さんは正見さんには過ぎた人です」と述べたそうだ。僕たちの結婚生活は、結婚式の日のある失敗から出発している。式と披露宴が終わり、その日宿泊する予定の東銀座東急ホテルに着いて初めて気づいた。宿泊のクーポンや切符がなかったのだ。慌てて足立区のアパートまでタクシーで取りに帰った。新婚旅行の行き先は京都だった。

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昼食は沼津たばちゃん梅雨晴間

沼津にある加藤学園に年に数回お邪魔している。高校2年生に俳句を教えるためだ。授業は午後なのだが、午前中から出かけるようにしている。沼津港だとか、御用邸だとか見所が結構あるからだ。三島のスカイウォークから絶景の富士を眺めたこともあった。この日は久しぶりに沼津漁港に行くつもりだったが、新幹線の中で突然津波警報が鳴った。ミンダナオ沖で大地震が起きたらしい。海に行くのは諦めて、沼津駅周辺で過ごした。駅前の仲見世通りが、半分シャッター街になりかけているように感じる。いかにもおばちゃん仕様の婦人服の店がやたらと多い。不釣り合いなキン肉マンの巨大な店舗がある。歩いている人はぼくの住む元住吉よりずっと少ない。

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限りなき色あり香あり薔薇の花

薔薇は、おそらく世界で一番知られている花の一つだろう。薔薇の歴史を辿れば、エジプト・メソポタニアまで遡る。サン=テグジュベリの『星の王子さま』を象徴するのも薔薇である。池田理代子の漫画『ベルサイユのばら』も薔薇の名を冠していた。ぼくは、加藤登紀子がカバーして大ヒットした「百万本のバラ」が好きだ。東京の薔薇園と言えば、旧古河庭園がまず頭に浮かぶ。洋館と薔薇の組み合わせが実に美しい。神代植物公園の薔薇園も広大だ。練馬区にも個性的な薔薇園がある。「四季の香ローズガーデン」である。都営地下鉄の終点の光が丘の駅を降り、歩いて6分ほどだ。メタセコイヤの背の高い緑に囲まれた小さな庭に薔薇が溢れている。

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それなりに田園調布の祭かな

「やるじゃん」拍子木の音が聞こえ、神輿が賑やかに駅前に入ってきた。下町の祭には遠く及ばないにしても、この神輿、なかなか勇壮である。どうやら多摩川浅間神社の祭らしい。ここは田園調布の西口だが、東口では、お祭りに合わせたフェスティバルが開催されていた。子供たちや親子連れが店の間を回っている。もちろん、定番の焼きそばにビールもあれば、金魚すくいもある。中には、うちわに好きな絵を描くブースもあった。イタリアンの店のピザが山盛りになって並べられているのが田園調布らしい。ぼくは、子供の頃9年間田園調布に通った。ぼんやりした子供だったので、鮮明な思い出が数多くあるわけではない。

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父の日の父の思ひ出す詩祭かな

昨日、詩人の青木由弥子さんから「Rurikarakusa」が送られてきた。一種の同人誌だが、A4縦型1ページが一人に割り当てられ、3段に組まれている。つまり、三つ折りにすると定型の封筒に入れることができるのだ。製本が要らないし、郵送費を格段に節約することができる。その「Rurikarakusa」に宮田直哉の詩が載っていた。宮田直哉はぼくも加入している詩誌「カナリア」の編集長で期待される若手の詩人だ。2024年度には福田正夫賞を受賞している。メールで簡単な感想とお礼を送ったら、すぐに返信があった。その中で「明日は詩祭です」の一言があった。「詩祭?」聞いたことがある。一枚の写真を思い出した。

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『大花野』引越して来て更衣

これまで神保町にあった書店『大花野』が、この6月から川崎市幸区のコミュニティカフェ「メロディココ」内、ココバスケットの本棚へ引っ越した。メロディココは、生活クラブ生協が「お互い様の助け合い」を広げようと開設した多世代の居場所スペースである。介護のよろず相談所もあれば、多世代が集うココ食堂も開かれている。句集『大花野』が刊行されたのは、2022年2月だった。それから4年が経った。その間、さまざまな形で取材され、取り上げられ、論じられてきた。東京新聞や読売新聞では大きなスペースを割いて紹介された。介護関係の新聞に取材されたこともある。認知症が社会的に大きな問題になっているからだ。

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懐かしき友よりLINE梅雨の冷え

月に一度の三郷の日である。認知症を抱える年配の方々と一緒に俳句を作る。思い出を語っていただきながら、一つの作品を編んでいく。ぼくにとっては、いちばん緊張し、頭の回転を要求される時間だ。いつもは三郷の駅前のドトールでモーニングをとる。だが今日は、新松戸で一度降りた。ドトールの冷房の寒さが、どうにも耐えられそうになかったからだ。駅前でモーニングのできそうな店を探す。カーディガンを羽織ってはきたが、外の風は冷たい。目に入ったのはマクドナルドだった。「寒かったらどうしよう」そう思いながら、仕方なく入る。店内は暖かかった。ほっとした。席に着いた、その途端だった。LINEの着信が鳴った。

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駅前の巨象の如きビル薄暑

午前中の仕事が終わり、グダグタしていたら午後の3時を過ぎた。家の中にいても仕方ないと思い、散歩に出かけた。元住吉の駅を過ぎ、綱島街道を渡った。「この辺りに喫茶店があったはずだ」しかし、その喫茶店はシャッターが降りていた。駅まで戻ってきて綱島の古民家喫茶を思い出した。念のため、スマホで調べたら、休みだと分かった。代わりに自由が丘に出かけた。気になっていた小洒落たカフェに入った。ホットケーキを頼もうかと思ったが、あまりにデコレーションがしつこそうなので、諦めてコーヒーだけ注文した。隣では、女の子が二人スパゲッティをシェアして食べている。子連れのママもいる。